ひとり暮らしの朝は、コーヒーから始まります。豆を挽いて、お湯を落として、立ちのぼる香りを深く吸う。毎日同じ動作なのに、この香りがすると、決まって思い出す人がいます。
学生の頃、駅前の喫茶店でアルバイトをしていました。そこで親しくなったのが、少し年上の女性店員さんです。仕事終わりに、彼女が淹れてくれる紅茶を飲みながら、他愛のない話をする。それが楽しみでした。
彼女は、いつも明るい人でした。冗談を言っては私を笑わせて、口癖のように「大丈夫、大丈夫」と言う。私はその言葉を、そのまま受け取っていました。
後になって、彼女にはひとに言えない事情があったと知りました。詳しい経緯は、今もわかりません。ただ、思い返すと、あの「大丈夫」はいつも声が少し高かった。笑い方も、ほんの少し硬かった。
言葉は明るいのに、声だけが別のことを言っていたんです。当時の私は、ただの癖だと聞き流していました。気づいたのは、ずっと後です。
言葉は取り繕えても、声には、その人の気持ちの核が先ににじむ。私が鑑定で「気持ちの核」という言葉を使うのは、この記憶が原点にあります。
祖母なら、きっと言うでしょう。「あんた、言葉しか聞いてなかったんでしょ」と。その通りでした。
事情を知らなかった私に、できたことは多くなかったはずです。それでも、わからないことは、わからないまま。声に耳を傾けて、相手の事情を受け入れることはできます。
人の声を聞き続けた日の夜は、ジャスミンティーを淹れます。浄化のお茶と呼ぶほど大げさなものではありません。ただ、湯気の香りを吸うと、誰かの声でいっぱいだった耳が静かになるんです。
今日、誰かの「大丈夫」を聞いたら、言葉の中身より、声の温度に耳を澄ませてみてください。そのあとで、自分のために温かいお茶を一杯。あなたの「大丈夫」にも、ちゃんと耳を傾けてあげてくださいね☕
この記事を書いた人
澪音霊視で鑑定しています。 「見ようとしなくても、見えてしまう」この力は祖母から受け継ぎました。以前はコールセンターで管理職をしていて、たくさんの人の声に向き合ってきました。 ブログでは占いのことや、日々の暮らしで感じたことを綴っています。気軽に読んでもらえたら嬉しいです。

